理屈の多い珈琲店

やたら理屈の多い店主のいる珈琲店がある。
元々化学系の研究者だかエンジニアだったそう。

お店は落ち着いた雰囲気で、なかなかこじゃれている。
その店にはメニューは置いてない。
好みを伝えると店主が豆を選んで淹れてくれる。
というより、店主が好みで焙煎したものを押し付けられるw

店主によると、珈琲の香りや味は、豆の種類よりも、焙煎の深さに左右されるそう。
まず、自分の好みの焙煎の深さがあり、そしてその深さに最も合う豆を選ぶとよいらしい。
私は素人なので、ブルーマウンテンは酸っぱいとか、モカは苦いとか、とにかく豆の種類が先にくると思っていたんだが、どうもそうじゃないらしい。

そういった講釈が一段落するころに、お湯が適温に沸いたようだ。
研究者らしく、ケトルに温度計を突っ込んで85度きっかりにお湯を沸かしている。

そのお湯で、客の珈琲を鼻歌を歌いながら淹れてくれる。
今まであんなに饒舌に講釈を垂れていたのに、鼻歌だよ。

まずは珈琲にお湯を少しだけ注ぐ。
きめ細かい泡がたち、こんもりと盛り上がる。
その後、お湯を時間をかけて、細く静かに注いでいく。
いれ終わったら、珈琲ポットを遠火にかけて少し振り混ぜる。
私はそんな珈琲の淹れ方を見たことがない。

どうぞ、と店主が言いカウンター越しに珈琲を出してくれた。

私が珈琲は全くわからないと言って、店主が出してくれた珈琲は「中煎」だそうで、私には青臭く、薄く感じた。
店主にそう言ったら、「薄いと言われると、豆が少ないのか、煎り方が浅いのかどっちでしょうねぇ」などという。

こっちは素人なのに、そんなことわかるかい。
まったくいちいち理屈っぽいよ。

すると、じゃあ、と言ってもう一度鼻歌付きの同じ手順で、「深煎」を出してくれた。

うん、これはうまい。

すると、店主がどや的な感じで、それがお客さまの好みということですよ。なんて言う。
私は珈琲の味なんて全くわからなかったんだが、どうも「深煎」が好きということらしい。

「有機化学」なんて本が片隅に置いてある店。
私もコテコテの理系人間なので、そんな店主とは会話が合う。

煎り方の次に大事なのは、お湯の温度らしい。
85度を越えて温度が高くなればなるほど、急激に苦くなるらしい。
だからケトルに温度計が突っ込んであったのだ。
自分の好みの焙煎→温度を選んで、それに適した豆を選ぶ。

焙煎の深さと風味の関係をプロットしたグラフと、温度と風味の関係をプロットしたグラフを見せられた。
いかにも大学の研究室で書きそうなグラフだ。
そして、それぞれに適した豆も書いてある。
グラフの横軸の物理数が…などと解説が加わる。
言葉がいちいち研究者っぽい。

こんなに理屈っぽい店はない。

私が理系人間であることを察してか、話はどんどん理屈っぽくなっていく。
街の喫茶店というより、珈琲研究所といったほうがふさわしいお店。

閑静な住宅地にあるが、優雅に珈琲を楽しみたい近所の有閑マダムたちは寄りつくまい。
これで商売になるのか?なんて、余計なお世話を考えたくなる。
でも、私は気に入った。

2016-03-13 10:43:15(Sun)
 

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読んでいるだけで、コーヒーの香りがしそうなお店ですね。

素敵な感じがするけれど、マダムには向かないのかな?
店主さんのせいかな?(笑)

つばめとそらさんは気に入ったんですね。
似た部分が引き寄せ合うのでしょうか?(*^_^*)
2016-03-13 19:29 | みみ | URL   [ 編集 ]

Re: みみさん 

自分に合ったコーヒーを見つけてくれて、また、化学的に見たコーヒーの淹れ方談義が面白かったです。

店の雰囲気もよくて、クラシックの流れるいい店なんですけど、店主がコーヒーオタクなんですよ。
それが面白いんですけどね。
でも、お客さんが入ってコーヒーを飲んでるのを見たことがないんです。
豆を買って帰るお客さんはいらっしゃるんですけどね。
ゆっくりしたいのに、コーヒー談義を聞かされちゃあ落ち着かないでしょうねw

ケトルに温度計が突っ込んであるのはなかなかシュールですよ。しかも二本。測定誤差がなんちゃら…
2016-03-13 20:04 | つばめとそら | URL   [ 編集 ]

 

こだわりのお店ですね。
カッコいいなぁ。

お気に入りの店があるっていいですね。
私も行き付けのお店とか欲しいのですが、出不精がたたって、見つけられません。
2016-03-15 20:44 | ダンゴム | URL   [ 編集 ]

Re: ダンゴムさん 

確かにカッコいいんですけど、店主と話していると、浮世離れした研究者だなーと。
どこか私と同じ匂いがするけども、世俗にまみれた私と違って、浮世離れした人だなあ、というのが正直な感想です。

二杯目の深煎り珈琲は結局サービスでしたし、採算度
外視で自分の納得のいく仕事をしたいということでしょう。

いい意味でとても贅沢な生き方に見えました。
私は店主にそんな憧れを見たんだと思います
2016-03-15 21:22 | つばめとそら | URL   [ 編集 ]

 

その優雅なマダムになりたいです。
ん~きっとなれないな。
寄り付きたくなりそうだし。

私も深いりが好きです!
2016-03-15 23:05 | きたあかり | URL   [ 編集 ]

Re: きたあかりさん 

いちいち理屈が出てくるとめんどくさくないですか?
いやいや、興味深く聞かれるのでしょうね。

深煎りがパンチがあっていいですね。
でも、中煎りより浅い煎りの味わいがわかるようになりたいとも思ってもいます。
2016-03-16 22:17 | つばめとそら | URL   [ 編集 ]

 

素敵なお店ですね。

そんなお店で珈琲を飲んでみたいな・・・
2016-03-17 23:48 | あき | URL   [ 編集 ]

Re: あきさん 

お店は確かに素敵なんですよ。
あ、そうそう、このお店はとある学園都市のすぐそばにある高級めな住宅地にあります。
店の雰囲気は、付近に住むマダムが好みそうですが、店主は大学教授みたいな雰囲気なんですよ。
浮世離れ、採算度外視、空気読まずに研究に没頭している人。
不思議なお店です。
2016-03-18 21:58 | つばめとそら | URL   [ 編集 ]

 

かなり理屈ぽい店主みたいですね∧( 'Θ' )∧
でも、面白そうな感じがします。薫子の家の近くにあるなら足を運んでみたいお店ですね。。。
でも、文系人間で感覚人間の薫子には店主と話が編み合うかしらね(´・_・`)
2016-03-22 07:36 | 薫子 | URL   [ 編集 ]

Re: 薫子さん 

そうえば妻は私と正反対の文系人間ですが、店主の話はおもしろいと言っています。
そもそもそのコーヒー店は妻に連れていかれたんですよ。
コーヒー談義を面白く感じれば、また行こうという気になるようです。
一人に耽りたかったり、連れとの会話を楽しみたかったら、めんどくさいことこの上ない…
2016-03-22 20:09 | つばめとそら | URL   [ 編集 ]

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2016-03-26 13:17 |  |    [ 編集 ]

Re:鍵コメさん 

う~ん
私自身は本に必ずしも答えはなくともよいと思っています。
理系が読む技術書や学術書には論理的帰結があるものですが、文学では、答えを敢えて読み手に委ねたりもしますよね。

単に文学とかそういった分野の本に興味がないだけでは…と思います。
そういう本を、理系人間でも読む人は読むでしょうし、文系人間でも読まない人は読まないでしょうし…
答えになってますか?
2016-03-26 20:04 | つばめとそら | URL   [ 編集 ]

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2016-03-27 04:23 |  |    [ 編集 ]

プロフィール

つばめとそら

Author:つばめとそら
うつ状態のときもあるさ
日々の気持ちをつづっていきます。
(o^-')b

【私の治療歴】
■投薬治療
 2008年6月~2013年5月
 
■心理療法
 来談者中心療法によるカウンセリング
 認知療法
 マインドフルネス
 森田療法

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